日本科学史学会生物学史分科会シンポジウム
生物学が語る「自然」のポリティックス
Politics of Biological Discourses on “Nature”
[趣旨]
この10年ほどで自然保護のあり方は大きく変わりました。かつて自然保護といえば、人の手が入っていない自然を開発から守ることでした。でも近年では、文化・社会と深く結びついた「自然」が保護の対象とされつつあります。たとえば現在、日本政府は2010年に名古屋で開催されるCOP10に向けて「SATOYAMAイニシアティブ」をすすめています。そこでは生物学者たちが積極的に発言し、日本文化がつくってきたとされる「里山」をめぐる議論に大きな影響を与えてきました。しかし歴史的にみれば、このような生物学者による文化・社会と結びついた「自然」の語りは、決して新しいものではありません。では、過去の生物学者の
「自然」をめぐる語りは、同時代においてどのような政治的な役割をもっていたのでしょうか。このシンポジウムでは、20世紀前半の生物学者・農学者の「自然」をめぐる語りを検討し、生物学史が現在の自然保護に示唆するところを探りたいと思います。今回のシンポジウムでは科学史以外の分野で「自然」をめぐる歴史研究をすすめている演者の方をお招きし、コメントも歴史的視点と環境倫理の観点の双方からお願いしています。
日時:2009年12月13日(日)午後2時~5時
会場:東京大学先端研駒場リサーチキャンパス4号館2階講堂
(アクセス:http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/maps/)
[プログラム]
ナチス農学の自然観――コンラート・マイヤーを手がかりに
藤原辰史(東京大学・農業史)
日本植民地主義と自然-アジア・太平洋戦争期の緑化運動-
中島弘二(金沢大学・地理学)
狩猟と動物学の近代――1930年代日本における「伝統」の創造
瀬戸口明久(大阪市立大学・科学史)
コメント
坂野徹(日本大学)
篠田真理子(恵泉女学園大学)
鬼頭秀一(東京大学)
(司会:篠田真理子・瀬戸口明久)