2023年5月20日(土)に行われた日本気象学会春季大会のシンポジウムに、ICEDSの寺尾 徹教授がパネリストとして参加しました。
シンポジウムのテーマは「夏季アジアモンスーン研究の多面的展開」。寺尾教授は「アジアモンスーンの科学と国際共同観測計画の新展開」と題して、新世代のアジアの水文気候学研究プロジェクト、AsiaPEXの国際共同観測の考えについて議論を交わしました。

アジアモンスーン研究における重要なこととして、まずは観測があります。特に、アジアモンスーン理解では陸面大気カップリングがカギを握っていますが、陸面に近い大気の構造や、陸面大気間の熱や水蒸気交換のプロセスは、人工衛星からの観測によっても正確に把握することが難しく、数値モデルの扱いにおいても厄介なパラメタリゼーションに頼る必要のある困難な分野です。それだけに、その場での物理プロセスの直接観測が重要になります。

国際共同観測が重要である理由としては、アジアモンスーンが大気を通じてグローバルに結合されたプロセスによって構成されていることが挙げられます。ローカルな水文気候学的プロセスの変動は、全球の海面や陸面の変動とかかわっているし、ローカルな陸面大気カップリングがグローバルに気候を変化させることを示す研究がたくさんあります。世界で協力をして大規模なモデルや人工衛星による観測を活用することがどうしても必要となります。
また世界の同じ関心を持つ人々には、気候変動現象が起こっている現場の住民や研究者、全球的視点の研究者もおり、国際共同観測はこうした人々が出会う場も提供します。

今回の議論を終えて、われわれの考えているアジアモンスーンに関する科学的研究課題についての問題意識が、多くの学会員にも共有されていると感じました。また、気候変動研究がいかに人々のリスクの軽減に役立つのかに関する意識が高まっていることも実感しました。

シンポジウムの様子