セミナー

講演:吉田秀典(香川大学創造工学部教授)

趣旨と概要

近年,カーボンニュートラルの観点から,木質バイオマス発電の普及に注目が集まっている.また,バイオマス発電の利用推進のために,重金属の吸着材として使用した後の籾殻を燃料としたバイオマス発電の普及も期待されている.今後,バイオマス発電のさらなる導入にともない,木質灰や籾殻灰が大量に排出されることが予想される.ところが,これらの灰類には重金属が含まれていることがあり,実際,多種多様な重金属の包含が確認されている.したがって,こうした灰類は最終処分場に廃棄されることになるが,最終処分場はひっ迫しており,2021年現在で,その残余寿命は21.4年しかない.他方で,こうした灰類を無害化するには,現状での処理では多大なコストがかかる.カーボンニュートラルと廃棄物の減容を達成するには,重金属の溶出を防ぎつつ,灰類を大量に再資源化することが望まれる.その手法の有力な候補として,こうした灰類のコンクリートへの混和が考えられる.しかしながら,木質灰や籾殻灰を混和したコンクリートのワーカビリティーや圧縮強度等の性能は普通コンクリートより低くなる可能性があり,さらに,コンクリートの性能変化は,コンクリートの重金属封じ込め機能の低下につながる可能性がある.
そこで本研究では,木質灰や重金属吸着籾殻灰を混和したコンクリートのフレッシュ性状,ならびに圧縮強度や乾燥収縮等の硬化後の性状について,普通コンクリートとの比較を行うことにより,木質灰や重金属吸着籾殻灰を混和したコンクリートの利用可否を検討した.さらに,これらの灰類の混和によってコンクリートの性能が変化した際における重金属溶出量増減の有無を確認した.
その結果,灰類を混和したコンクリートは混和剤添加量を調整することで,品質的に問題のないスランプと空気量を有すること,わが国における標準供用期間の耐久設計基準強度を超える圧縮強度を有すること,重金属溶出量は普通コンクリートと同程度であることが確認された.中には,普通コンクリートの性能を上回る事例もあった.これらより,灰類混和コンクリートについては,通常の使用が可能であり,とりわけ,灰類をセメントに置き換えることで,さらなるカーボンニュートラルへの貢献につながることが判明した.

日時

2023年2月20日 17:15-18:05

会場

ICEDSルーム(遠隔教育調査研究室)/香川大学幸町北2号館2F +zoomによる遠隔配信

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